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多重債務者を撲滅せよ! 改正貸金業法の改正内容を整理する(前編)
収支のバランスが大切」「ご利用は計画的に!」―― このフレーズを見て、大多数の読者は何のことだか瞬時に想像できたに違いない。そう、どちらも消費者金融のコマーシャルに出てくる有名な“決めゼリフ”だ。手軽さや便利さ・誠実さを強調し、いかにも「お金に困っている皆様を応援します」と言わんばかりのイメージ広告。「高金利」や「不適切な取り立て」といった闇の部分を封印し、クリーンさばかりが表現されたテレビCMだ。
こうした広告戦略が“奏功”してか、全国信用情報センター連合会(全情連)によると、消費者金融からお金を借りている人は日本全国で約1400万人にのぼる。国民の8.5人に1人がサラ金を利用している計算だ。そのせいか、儲け主義に走る貸し手側の暴利な貸し付け(貸し過ぎ)と、返済計画が不十分な借り手側による安易な借り入れ(借り過ぎ)によって、多重債務者は増加の一途をたどるばかりだ。今回、貸金業法(貸金業の規制等に関する法律)が改正されることとなったのも、こうした多重債務問題を解決しようという狙いがある。本改正では住宅ローン(不動産購入のための貸し付け)は規制の対象外だが、指定信用情報機関制度が創設されることで、個人の信用情報がより多くの情報機関で共有されることになる。その結果、これから住宅ローンを借りようという人も、融資審査の面で影響は避けられない。そこで、本コラムでは前編と後編の2回に分け、貸金業法の改正内容を整理することにする。
取り立てに関する規制が強化され、執拗な取り立てが法律で禁止されるようになる
今回の改正は、(1)貸金業者の業務の適正化、(2)過剰貸し付けの抑制、(3)金利体系の適正化 ―― と、大きく3つの柱で構成されている。本編では、貸金業への参入規制の強化を主な目的とする、(1)貸金業者の業務の適正化について詳しくみていくことにしよう。
まず、業務の適正化の1番目として貸金業者への罰則が強化された。たとえば無登録営業をした場合、従前は「5年以下の懲役または1000万円以下の罰金」だったのが、改正後は「10年以下の懲役または3000万円以下の罰金」となった。また、法令や行政庁の処分に違反した場合はすべて登録取り消しなどの対象となるよう、監督強化された。次に、2番目として貸金業登録時の財産的基礎要件(破綻などに備えて用意しなければならない純資産の額)が引き上げられた。これまでは500万円(法人の場合)だったのが2009年6月に2000万円となり、来年6月には5000万円へとプラス3000万円引き上げられる予定だ。いずれも貸金業者にとっては厳しい内容だ。
さらに、3番目として取り立てに関する規制も強化された。今回、かなり踏み込んだ改正になっている。具体的には以下の5つの行為規制が強化された。
- 1.夜間に加えて日中の執拗な取り立てなどを規制する。
- 2.貸し付けにあたり、トータルの元利負担額などを説明した書面の事前交付を義務付ける。
- 3.貸金業者が借り手の自殺により保険金が支払われる保険契約を締結することを禁止する。
- 4.公正証書の作成にかかる委任状の取得を禁止。また、利息制限法の金利を越える貸し付けの契約について、公正証書の作成の嘱託を禁止する。
- 5.連帯保証人の保護を徹底するため、連帯保証人に対して「催告の抗弁権」および「検索の抗弁権」がないことの説明を義務付ける。
| 催告の抗弁権 | 貸金業者(債権者)が保証人に返済を請求してきた際、保証人は「まずは債務者に請求してください」と主張できる権利のこと |
| 検索の抗弁権 | 保証人への強制執行に対し、債務者の財産を先に差し押さえるよう主張できる権利のこと。換言すると、債務者より先に差し押さえられることを拒否できる権利 |
冒頭で触れたCMのイメージとは裏腹に、本人(借り主)の家族や勤務先、さらには子供の学校にまで取り立てに押しかけるサラ金業者。そのせいで追い詰められ、夜逃げや自殺に追い込まれるケースは今も昔も変わらない。今般、借金苦でホームレスへの転身を余儀なくされることも珍しくなくなっている。いずれも執拗な取り立てが原因とされる。規制の強化により被害者が少しでも減ることを期待したい。と同時に、「借りたのは30万円なのに、気が付くと150万まで返済総額が膨れ上がっていた」などといった話を耳にすることがある。特にヤミ金融業者(ヤミ金)では貸付金利の上限などあってないようなもの。トータルの元利負担額を説明した書面の事前交付を義務付けたのは、違法金利による貸し付けを排除する狙いがある。
さらに、3つ目の保険契約の締結禁止はかなり衝撃的な内容だ。自らの死をもって返済しようとする人を減らすための、まさに苦肉の策だ。借りたものを返すのは至って当然のことだが、「自殺しなくても……」という無念な気持ちが筆者の頭をよぎる。自殺者が減ってくれることを願うと同時に、並行して相談窓口などの受け皿の整備が急がれる。そして4つ目は委任状の取得を悪用して、業者が自分たちに都合のいい書類を作成しないよう規制するための改正だ。
その他、今回、貸金業務取扱主任者の資格制度を創設し、2010年6月までに営業所への設置が義務化される予定だ。貸金業にかかる法令に精通した主任者による助言・指導を通じて、貸金業者の法令順守を徹底させるためだ。
スピーディーかつ手軽にお金が借りられるサラリーマン金融。しかし、その便利さが時として仇(あだ)となって「サラ金難民」を生み出す。貸す方が悪いのか、それとも借りる方が悪いのか……。どちらにも言い分があるだろう。加害者も被害者もいなくなることが理想だ。次回、後編では(2)過剰貸し付けの抑制と(3)金利体系の適正化について解説することにする。
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