住宅ローン おすすめ記事 終わりの見えない低金利競争 フラット35Sの知られざる落とし穴

終わりの見えない低金利競争 フラット35Sの知られざる落とし穴

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 昨年後半から、住宅金融支援機構によるフラット35の人気が高まっている。【表1】にあるように、昨年度の第3四半期には申請戸数が初の2万戸台を達成した。同機構が誕生して以来の高成績といえる。こうした傾向は今年度も続いており、日本経済新聞(7月13日)によると、平成22年度の第1四半期には前年同期比2.7倍のおよそ3万7000戸の申し込みがあったそうだ。そして、そのきっかけとなったのが当初10年間、フラット35の借入金利から1.0%金利優遇するフラット35Sの登場だ。政府による緊急経済対策の一環として、今年2月から12月末までの期間限定で取り扱いがスタートしている。たとえば3000万円を35年元利均等返済で借り入れした場合、フラット35とフラット35Sでは総返済額に約317万円の差が生じる。借入金利が1.0%優遇(当初10年間)される分、フラット35Sの方が返済負担が軽くなるわけだ。誰だって、余分な利息は1銭も払いたくない。こうした消費者心理がフラット35S人気に拍車をかけている。


 そのせいか、住宅市場の低迷により住宅ローン業界も顧客争奪戦が激化する中、金利ディスカウント合戦はさらなるエスカレートの様相だ。何と、今年6月には東京スター銀行が「借入金利ゼロ」の住宅ローンを発売した。500名の募集ということもあり、1カ月弱で受け付けを終了するほどの人気ぶりだった。この出来事はいかに消費者が金利に敏感になっているかを裏付ける好例と言えるだろう。改めて、金利優遇のインセンティブ効果には驚かされるばかりだ。


【表1】フラット35 買い取り申請戸数の推移

(単位:戸)

年度 第1四半期(4~6月) 第2四半期(7~9月) 第3四半期(10~12月) 第4四半期(1~3月) 年度合計
平成21年度 13,538 19,239 22,562 25,970 81,309
平成20年度 10,353 10,129 10,954 10,336 41,772
平成19年度 16,756 12,389 15,026 8,824 52,995
平成18年度 17,431 15,649 15,032 11,297 59,409
平成17年度 13,890 19,643 14,188 11,852 59,573
平成16年度 1,489 1,180 3,318 11,186 17,173

(出所)住宅金融支援機構


 しかし、メリットがあればデメリットもあるのが世の常。フラット35Sには注意点もある。メリットだけで飛びつくと、落とし穴にはまる危険があるのだ。後の祭りにならないためにも、商品特性を十分に理解しておくことが肝要だ。


■優遇期間が終わる10年後には、適用金利が1.0%上がることを忘れるな!


 筆者が考えるフラット35Sの落とし穴とは、ずばり「当初10年間1.0%金利優遇」=「11年目から1.0%金利が上がる」ことを覚悟しておかなければならない、ということだ。わざわざ指摘するまでもなく極めて当たり前のことなのだが、意外と気付いていないように思えてならない。米国のサブプライムローン問題を思い出してほしい。この問題が世界同時不況の誘因となったのは、借入途中で金利が段階的に上がる仕組みの住宅ローンだったからだ。ステップアップ金利により滞納者が続出したことで、焦げ付いた住宅ローンが不良債権と化して金融市場に襲いかかった。


 では、実際にフラット35Sを利用した際、11年目にいくら毎月返済額が増えるのか見てみよう。2000万円、3000万円、4000万円をいずれも35年元利均等返済で借りた場合、それぞれの金利で「当初10年間」と「11年目以降」の毎月返済額をシミュレーションしたのが【表2】だ。


【表2】フラット35S 35年元利均等返済の場合の毎月返済額(概算)

(単位:円)

  2.5% 3.0% 3.5%
当初10年間 11年目以降 当初10年間 11年目以降 当初10年間 11年目以降
2,000万円 62,000 69,000 67,000 75,000 72,000 80,000
3,000万円 92,000 104,000 100,000 112,000 108,000 120,000
4,000万円 123,000 138,000 133,000 149,000 143,000 160,000

※ボーナス返済はなし


 たとえば3000万円を金利3.0%で借りた場合、当初10年間は毎月返済額がちょうど10万円になる。それが11年目以降には11万2000円へと上昇し、差し引き毎月1万2000円の負担増となる。この増額分1万2000円を「たかが1万2000円」と捉えるか「されど1万2000円」と捉えるかで、フラット35Sは「善」にも「悪」にもなる。思い返せばフラット35の名前の由来は、返済期間中に借入金利が変わらない(=フラット:平らな)ことにあったはずだ。ところが金利の優遇期間を設けたことで、結果的に“二段階金利”となってしまった。


 11年目以降、「本来の金利に戻る」と考えるのが素直な解釈なのかもしれないが、見方を変えれば「利上げ」と受け止めることも奇異な発想ではないはずだ。もはや右肩上がりで収入が増える時代は過去のものとなっている。将来の収入増を見込んだ資金計画はとても危険であることを、今一度、再認識する必要があるだろう。


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